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平成29年(2017年)2月6日更新

情報公開・個人情報保護審議会(第46回議事録)

第46回東京都情報公開・個人情報保護審議会議事録

成22年9月13日(月曜)
京都庁第一庁舎42階 特別会議室B

9時58分開会

  • 堀部会長
    東京都情報公開・個人情報保護審議会第46回会合を開催させていただきます。
    お暑い中、またご多忙のところをお集まりいただきまして、ありがとうございます。
    暑さも今日まであたりという情報もありますので、そうなってくれるといいかと思いますが、そういう中、ありがとうございます。
    本日は、高橋委員がご欠席との連絡が入っております。
    まず、初めに高橋部長から、事務局の異動についてご報告いただきたいと思います。よろしくお願いします。
  • 高橋都政情報担当部長
    座ったままで失礼させていただきます。
    前回7月の審議会の後、事務局職員に人事異動がございましたので、ご報告をいたします。
    情報公開担当課長の長坂が転出いたしまして、後任として加藤裕三が8月30日付けで着任をいたしました。
  • 加藤情報公開担当課長
    情報公開担当課長の加藤でございます。よろしくお願いいたします。
  • 堀部会長
    よろしくお願いします。
  • 高橋都政情報担当部長
    事務局からのご報告は以上でございます。今後ともよろしくお願い申し上げます。
  • 堀部会長
    それでは、今日の議事に入らせていただきます。
    お手元のファイルに、あらかじめお送りしたものを若干修正した資料をファイルしていただいています。これをご覧になっていただきたいと思います。
    ファイルの最初の頁にありますように、今日は審議事項としまして「現行の情報公開制度における運用上の諸問題について」、その中の「権利濫用的請求について」を取り上げることにいたします。
    次に、報告事項としまして、「情報公開制度の運用状況について」、「個人情報保護制度の運用状況について」ということになっていますので、よろしくお願いいたします。
    前回、前々回と2回にわたりまして、営利目的請求の急増についてということで、審議をしていただきました。この問題について何らかの対応策をとるべきであるという点については、審議会委員の間の一致した見解であるとの確認をさせていただきました。
    そして、具体的な対応策としますと、営利目的とそれ以外の請求とで手数料に差を設ける方法ですとか、あるいは公益減免などを導入するなどのご提案もいただきました。
    これに関連しまして、手数料について差を設けたりしておりますアメリカの情報公開法の例について、事務局から報告していただくことも予定しておりましたが、内容といたしますと開示手数料とも密接に関連してくることになりますので、それはまた次回以降に審議を予定しております「開示手数料について」ということで報告をしていただくことにいたしました。
    今回は、ひとまず営利目的請求についての審議は前回で一応終わらせていただいておりますが、本日は、他の問題であります権利濫用的請求について、これについて審議をしていただきたいと思います。それが審議事項として議事に掲げたところであります。
    それでは、まず権利濫用的請求につきまして、北原課長から説明をお願いいたします。
  • 北原情報公開課長
    それでは、報告いたします。資料1をご覧ください。
    まず、1としまして東京都の状況についてご報告いたします。
    条例の規定でございますが、東京都情報公開条例には権利濫用的請求を禁じる直接的な規定はありませんが、4条で「この条例の定めるところにより公文書の開示を請求しようとするものは、この条例の目的に即し、適正な請求に努めるとともに、公文書の開示を受けたときは、これによって得た情報を適切に使用しなければならない。」と定めております。この規定は公文書の開示を請求しようとする者の責務を定めたものでございまして、直接当該規定を適用して開示を拒否した事例はございません。
    なお、著しく不適正な請求及び使用につきましては、権利濫用の一般法理により対処することとしております。
    次に、具体的に都におきまして過去にあった、あるいは現在行われております権利濫用が疑われる開示請求の事例の類型と概要について報告いたします。
    まず、アの類型といたしまして、請求の動機・目的が条例の趣旨・目的を逸脱していると思われるものがございます。この類型に該当する事例として3つ挙げさせていただきました。
    1つ目の事例は、主務課の事業執行に対する不満から、主として主務課の業務を停滞させる目的で同種の開示請求を繰り返し行うものです。いずれの請求も対象公文書に記載されている情報がほぼ同じであるため、繰り返し開示請求を行うことの意義が見出せないというようなものが、その多くを占めております。
    2つ目の事例は、自己と第三者との私的な紛争解決または第三者へのいやがらせをすることを目的として、自己に有利な情報を得る、あるいは、都に当該第三者へ行政処分や指導など何らかの制裁を加えさせるべく、繰り返し開示請求を行うものです。
    3つ目の事例は、特定の事務事業に関して既に一定の結論が出されているにもかかわらず、その結論に納得できないことから、主務課に圧力を加え、当該事務事業に関し都から何らかの自己に有利な処遇を引き出すべく、繰り返し開示請求を行うものです。
    これらいずれの事例も、請求者が納得のいく主務課の対応や処遇あるいは情報が得られるまで、あるいは、開示請求の方法によっては自己の目的が達成できないと認識するまで、開示請求は繰り返されることとなっておりまして、各主務課では日常的にその対応に追われ、通常業務にも支障を来す結果となっております。
    次に、イの類型としまして、請求等の態様に問題があると思われるものがございます。6つほど事例を挙げさせていただきました。
    1つ目の事例は、開示手数料を支払わず、開示を受けないまま、新たな開示請求を行うものでございます。現行条例上、以前にした開示請求に係る手数料を支払っていない開示請求者が新たな開示請求を行っても、これを拒むことはできないため、主務課では請求者が受け取らない公文書を保管する一方で、新たな開示請求を受け付け開示事務を行っていくこととなります。
    2つ目の事例は、開示日の打合せ等の連絡をしても応答せず、開示を受けようとしないというものです。開示請求後の自己の都合や手数料額への不満などから、多数の局にまたがる大量請求をしておきながら、主務課が開示日の打合せ等の連絡をしても応答せず、結局開示を受けず手数料も支払わないというものでございます。
    3つ目の事例は、特定の課が起案したほぼすべての公文書を約20年分開示請求し、文書の特定にもほとんど応じないというものでございます。この事例は、最終的には請求者の都合で最新の1年間分以外につきましては取り下げられましたが、それでも文書は大量となりまして、主務課では特例延長をして約3,000枚の文書を開示しております。
    4つ目の事例は、センシティブな個人情報が大部分であり、開示請求してもほとんどが非開示、黒塗りとなる公文書を1年間分請求しながら、文書の特定に一切応じないというものです。このような文書は、開示・非開示の判断を慎重に行う必要がある上、黒塗り作業も膨大となることから、主務課では開示事務に多大な労力を要することとなります。
    5つ目の事例は、特定の法人に関するすべての文書の開示請求を行い、ダンボール何箱分になっても手数料が何億円かかっても構わないと、文書の特定に応じないというものです。この事例につきましては、主務課においてリストを作成して提示するなど粘り強く説得したため、最終的には請求者は特定に応じ、対象公文書の枚数はかなり抑えられたものの、当初の請求のまま対応していたとすれば、約1万5,000枚もの対象公文書の開示事務を行うこととなったというものです。
    6つ目の事例は、相互に何の関連性もないさまざまな分野についての一般的関心、これは、都政にかかわるものに限りませんが、これに基づく質問を「○○であることがわかる文書」の開示請求という方法で繰り返し行い、文書の特定や内容の確認等の問い合わせにも一切応じないというものです。実際に対象公文書を交付する場合にも、応対した職員を威嚇するなどの行為を繰り返すばかりで、結局、開示された文書自体も持ち帰らず、実際に対象公文書を本当に必要として請求しているとも考えられないような、かなり問題を含むものであると言えます。
    東京都の現状は以上でございます。
    次に、2といたしまして、他の自治体の例を報告させていただきます。3つの類型に分けて説明いたします。
    まず、(1)は、条例に権利濫用の禁止規定を置いている例でございます。現在、都道府県レベルで、条例に権利濫用禁止規定を置いている自治体は、千葉県、山梨県、静岡県、三重県、富山県の5県でございますが、このうち千葉県、静岡県、三重県につきまして具体的に報告させていただきます。
    1つ目は、千葉県の例です。千葉県では、条例6条に「この条例に基づく行政文書の開示を請求する権利は、これを濫用してはならない。」という規定を置いております。そして、具体的には条例解釈運用基準におきまして、権利濫用に当たる場合を「特定部局の保有するすべての行政文書の開示請求をするもの、実施機関の事務遂行能力を減殺させることを目的とするもの、特定の個人を誹謗又は威圧し攻撃することを目的とするもの」などの権利濫用となる具体例を挙げておりまして、これらの場合には開示請求を拒否するものとしております。
    次に、静岡県の例を報告いたします。静岡県でも、条例4条1項に千葉県と同様な規定を置いております。そして、公文書開示事務等取扱要綱の中に、「開示請求権の濫用を根拠に請求を拒否する場合の取扱い」としまして、「県庁内のすべての公文書の開示請求をしたり、特定の部局の保有するすべての公文書の開示請求をするなど、この条例の目的、趣旨を逸脱し、実施機関の事務遂行能力を著しく減殺させたり、減殺させることを専ら目的としていると思われるような開示請求や過去に開示請求により得た情報を不適正に使用して他人の権利利益を侵害した事実が認められる場合であって、当該者から同種の内容の請求がなされ、不適正な使用が繰り返されると明らかに認められる開示請求に対しては、開示請求権の濫用により開示請求を拒否することができる。」と規定しております。
    ただいまご報告しました2県と山梨県では、いずれも情報公開法の制定を受けまして、旧条例の全面改正として制定しました現行条例に、権利濫用禁止規定を置いております。
    最後に、三重県の例を報告いたします。三重県では、平成20年12月25日に条例を改正しまして、5条2項に権利濫用禁止規定を追加いたしました。
    具体的な運用につきましては、「条例の解釈及び運用」の中の3、「開示請求権の濫用禁止」に基準を定めておりますが、その中で、権利の濫用の定義としまして、「形式上権利の行使として外形を備えるが、その具体的な状況と実際の結果に照らし、その権利の本来の目的内容を逸脱するために実質的には権利の行使として認めることができないと判断される行為」としております。
    そして、開示請求権の濫用は、「条例によって付与された開示請求権本来の目的を逸脱し、正当な権利行使とは認められないもの」などで、「特定の部局の保有するすべての公文書の開示請求や、実施機関の事務遂行能力を減殺させることを目的とする開示請求等に対しては、権利濫用の規定を適用することによって対応する」としております。
    権利の濫用的請求の類型として、(1)公文書特定に至らない包括的請求、(2)繰り返し請求、(3)害意ある請求の3つを挙げ、具体的に事例を、これは資料を1枚おめくりいただきました4頁にありますとおり、ここに挙げております。
    最終的には、個別事案ごとに種々の要素を比較衡量し、権利濫用に該当する場合には、その理由を明示した上で、実施機関は当該開示請求を12条2項により非開示決定することができるとしています。
    また、開示の実施等において不適正な行為がたびたび繰り返される、(4)その他の濫用的行為につきましては、総合的に判断し対応することとしています。
    このほか、富山県にも条例に濫用禁止規定があると説明いたしましたが、こちらは平成21年11月1日施行となっておりまして、三重県と同様に詳細な基準を定めております。
    次の類型になりますが、条例に「適正な請求及び使用」規定を置き、運用基準等で権利濫用であるとして開示請求を拒否できる場合を例示する例がございます。
    群馬県では、条例24条に、東京都の条例4条と同様に「適正な請求及び使用」規定を置いております。そして、「条例の解釈及び運用の基準」の中で、24条の解説として、「この条例によって県民に保障された権利に内在する制約、いわゆる権利の濫用の防止について24条を定めており、この制度を利用するに当たっての指針を示している。」と説明しております。
    その中で、解説の(3)にありますとおり、「どのような場合に権利濫用に当たるかは、開示請求の態様や開示請求に応じた場合の実施機関の業務への支障及び県民一般の被る不利益等を勘案し、社会通念上妥当と認められる範囲を超えるものであるか否かを個別に判断することになる。」としまして、具体的には、「実施機関の事務を混乱、停滞させることを目的とするなど開示請求権の本来の目的を著しく逸脱したような開示請求は、権利の濫用として請求を拒否できるものと考えられる。」としております。なお、このような場合に当たらない、単に事務処理上の対応が困難である大量請求につきましては、処理期限の特例により対処するものであって、権利の濫用に該当しないとしています。
    大量請求以外でも、これは、資料5頁の下から3行目から6頁の上から5行目までに記載しておりますような不適正な請求につきましては、権利濫用の一般法理を適用して拒否することができるとしております。
    最後の類型になりますが、(3)の条例には権利濫用禁止規定や「適正な請求及び使用」規定等を置かず、解釈及び運用基準と取扱い要綱で定めている例がございます。
    神奈川県の条例には、権利濫用禁止規定、適正な請求及び使用規定のいずれもございませんが、「条例の解釈及び運用基準」に「例外的な大量請求の取扱い」について規定し、「請求された行政文書のすべてについて諾否の決定をすることが、おおむね1年以内で可能な場合」は、条例10条5項、これは期間延長の規定になりますけれども、この規定で対応することとしております。しかし、「請求しようとする行政文書量が膨大で、その期間では全部の諾否の決定ができないような場合は、別に定める『不適正な大量請求に対する取扱い要綱』により対応する」としております。
    この取扱い要綱では、(1)害意ある大量請求、(2)請求対象文書が特定されない大量請求、(3)超大量請求の3つの場合の取扱いについて定めております。
    自治体の例は以上でございますけれども、一方、国の場合について7頁の3のところに載せてございます。
    まず、現行規定ですが、総務省で定めております「行政機関の保有する情報の公開に関する法律に基づく処分に係る審査基準」、この中の「開示しない旨の決定をする場合」の1つに、「開示請求が権利濫用に当たる場合」、これが挙げられております。そして、具体的に「権利濫用に当たるか否かの判断は、開示請求の態様、開示請求に応じた場合の行政機関の業務への支障及び国民一般の被る不利益等を勘案し、社会通念上妥当と認められる範囲を超えるものであるか否かを個別に判断して行う」こととされておりまして、「行政機関の事務を混乱又は停滞させることを目的とする等開示請求権の本来の目的を著しく逸脱する開示請求は、権利の濫用に当たる。」としております。
    これに関連しまして、現在進められております行政機関情報公開法の改正の検討状況について報告いたします。
    行政機関情報公開法の改正を検討するため、本年4月に立ち上げられました「行政透明化検討チーム」の取りまとめ(案)が8月24日に公表されたところでございますが、この中では、「開示請求手数料及び開示実施手数料の廃止・引下げを実施することに伴い適正な開示請求及び開示情報の適正利用の観点を法に明記し、手数料の廃止・引下げを実施した結果、濫用的な開示請求が生じるときには、行政機関情報公開法及び独立行政法人等情報公開法を所管する府省において、他の省庁と協議し、ガイドラインを作成し、適正な運用を進めることにより対処することとする。」としました。そうした権利濫用的請求について言及した箇所がございます。
    具体的な改正内容につきましては、これから検討されることと思われますが、東京都といたしましても今後の国の動きを注視しまして、必要に応じ当審議会でも報告させていただきたいと考えております。
    次に、権利濫用請求に関する裁判例を報告いたします。
    まず、(1)に権利濫用が認められた裁判例としまして、東京高裁平成15年3月26日判決を載せてございます。これは横浜市の事案ですが、3年分の国庫補助金受入事業の経費の使途が明らかになる書類、及び各課が保管する預金・貯金口座の通帳が開示請求されたものでございます。
    横浜市では、件数を絞ったり、単年度分の抽出を検討できないかなど提案いたしましたが、住民の方はこの提案を拒否し、全部の文書について請求を行っております。これに対しまして横浜市では、請求文書が十分に特定されていないにかかわらず補正を拒否したこと、条例の趣旨・目的を逸脱した権利の行使であるとして開示請求を却下したため、開示請求者がこの決定に対しまして市に訴えを提起して、一審では原告が敗訴しましたので、原告が控訴した事案でございます。
    東京高裁では、「情報公開請求権は市民の権利として尊重、擁護されなければならないが、一方においてこの情報公開請求権は、本件条例に基づき市民に対して付与された権利であるから、その権利の行使は、無制約のものではなく、あくまでも条例の趣旨・目的に則って正当に行使されるべきであり、本件公開請求は権利を濫用したものとし、その全部の請求が許されないというべきである。」と判示しまして、控訴を棄却しております。
    次に、権利濫用が認められなかった裁判例ですが、幾つかある中で、東京地裁平成15年10月31日判決を挙げさせていただきました。内容は、行政機関情報公開法に基づく自動車検査証の記載事項に係るものでございますが、具体的には資料の開示請求の内容のところにございます1)と2)の文書でございます。この請求に対しまして、行政側、国側でございますけれども、1)の文書につきましては、「行政文書の特定をすることができないため」、2)の文書につきましては、「該当する行政文書はなく、不存在のため」という理由で、いずれも不開示決定をしたために、請求者が決定の取消し等を求める訴えを提起したものでございます。
    この訴訟の中で、国側は、「本件開示請求に対応するためには、仮に職員1名を専従作業員とし、1日8時間全く休憩なしで、同じ作業効率で作業を進めたとしても、9か月以上かかることとなり、業務に著しい支障を来すのみならず、他の情報公開請求に対応する余裕がなくなり、かえって法の立法趣旨が没却されることから、本件開示請求は権利の濫用と認められるべきであり、不開示処分とすることが適当である。」と主張いたしました。
    これに対しまして東京地裁は、「開示請求文書の開示に相当な時間を要することが明らかである場合であっても、そのことのみを理由として、開示請求権の濫用として、開示請求を拒むことは原則としてできない。」とした上で、このような場合に、「権利濫用として不開示とすることができるのは、請求を受けた行政機関が、平素から適正な文書管理に意を用いていて、その分類、保存、管理に問題がないにもかかわらず、その開示に至るまで相当な手数を要し、その処理を行うことにより当該機関の通常業務に著しい支障を生じさせる場合であって、開示請求者が、専らそのような支障を生じさせることを目的として開示請求をするときや、より迅速・合理的な開示請求の方法があるにもかかわらず、そのような請求方法によることを拒否し、あえて迂遠な請求を行うことにより、当該行政機関に著しい負担を生じさせるようなごく例外的なときに限定される。」と判示しております。
    そして、本件の場合は、「検索に著しい時間と労力が必要となるとする被告らの主張には、被告自らの文書管理や情報管理に適正を欠くことを前提とする部分がかなり含まれており、また、原告の本件開示請求の目的等からは、本件開示請求が、被告の業務に著しい支障を来すことを意図されたものである等、原告が本件開示請求を濫用したと認めるに足りる事実は認められず、本件開示請求を、開示請求権の濫用と評価することはできない。」として、不開示決定処分は取り消されております。
    最後になりますが、10頁に諸外国で権利濫用的請求について規定している例を載せてございます。
    まず、イギリスですが、情報自由法14条で、「公共的機関に対する請求が嫌がらせで行われる場合は、1条1項の請求に応じる義務は課されない。」と定めております。
    また、第44回の当審議会で藤原委員が言及されておりましたが、「公共的機関が一の情報の請求に応じたことがある場合、その後同一の請求者から同様の又は実質的に類似の請求があっても、以前の請求への対応から合理的な期間が経過していない限り新たな請求に応じる義務はない。」との規定がございます。
    次にフランスですが、行政文書へのアクセスに関する法律の2条では、「開示請求を受けた行政庁は、数量、反復的・組織的性格の点で、濫用的とみなされる請求について、これに応じる義務を負わない。」と規定しております。
    さらに、ベルギーの行政の公開に関する法律6条3項では、「請求が明らかに濫用に当たるとき」と、「請求内容が明らかに漠然としすぎるとき」には、「行政文書の閲覧、説明又は写しの形による交付の請求を拒否することができる。」と規定しております。
    最後に、ニュージーランドですが、行政情報に関する法律の18条に、「請求がふまじめであるか、若しくは濫用であり、又は請求された情報が些細なものである」場合には、請求を拒否できる旨の規定がございます。
    以上、審議事項である権利濫用的請求につきまして、事務局のほうから報告をさせていただきました。ご審議のほど、よろしくお願いいたします。
  • 堀部会長
    ありがとうございました。
    ただいま、北原課長から説明していただきましたように、他の自治体の例から国の例、それから裁判例、さらに諸外国の例ということで整理をしていただいております。それで、これからいろいろご意見を伺うところですが、ちょっと意見と質問と分けてみていただいて、まずはただいまの説明について質問があればしていただいて、で、その質問が一巡をした後に、今度、意見としてそれぞれどのように考えられるかということで出していただくと、こういうふうにしたいと思います。
    あるいは、後半で質問も含めてということにもなるかもしれません。とりあえず、質問があればお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
    どうぞ、岡部委員。
  • 岡部委員
    岡部でございます。
    質問いたしますが、当然この権利濫用を抑止する上で各自治体がおとりになっているこういう対策は、極めて重要じゃないかと思っております。そういう前提で。
    三重県で、平成20年に追加的に改正措置がなされておりますが、わかればで結構ですが、改正前と改正後では、その抑止力といいますか、こういう権利濫用なり不適切な請求の状況が変化があったのかどうか、事務局で何か把握されていたら質問をさせていただきたいと思います。
  • 堀部会長
    そうですか、はい。それ、いいでしょうか。
  • 石岡情報公開係長
    申し訳ありませんが、それについては、三重県には直接お伺いしてないので、次回にご報告させていただきたいと思います。
  • 岡部委員
    わかりました。
  • 堀部会長
    三重県に限らず、ほかのところも聞いておいていただくとよろしいかと思います。
  • 石岡情報公開係長
    三重県と、あと富山県が最近になって導入しているのですが、以前からこの規定がある県よりも最近導入した県の方が、効果がよりわかると思いますので、そちらも次回までに確認しておきたいと思います。
  • 堀部会長
    そうですね。よろしくお願いします。
    ほかにいかがでしょうか。
    それでは、質問も含めていろいろご意見をお出しいただくといいと思うのですが、情報公開制度を創設したころは、こういう開示請求あるいは公開請求権というものをできるだけ尊重していこうということで、権利濫用についても議論はしておりますけれども、あまりこういう規定を置いてということはしてきませんでした。
    そういう中で、適正な請求とか適正な利用とかという、こういうことの規定を設けるところもありましたけれども、権利濫用というのを直接前面に掲げてというところはなかったと記憶しております。
    しかし、その後の実際の運用で、こういう言い方がいいかどうかわからないですが、一部の方にこういう権利濫用的な傾向が見られるというのは、いろいろな自治体で聞いてきております。それに対してどう対応するのかということで、私が意見交換したりした自治体の方からしますと、非常にここら辺に対してどう対応したらいいのかということで悩んでいる様子が大変よくわかりました。
    本来、情報公開請求というのはこういうことでということで考えたのですが、実際はそうでない事例が出てきました。何か歯どめができないだろうかというようなことで、それぞれのところで大変苦慮していたというところであります。
    そういうことが実際に出てきているものですから、これを具体的に対策を講ずべき問題と受けとめるか否かという点を、まず考えていただきたいのです。また、対策を講じるとした場合に、どのような対策が有効・適切であるかというようなことですね、その2点あたりについてご意見をお出しいただければと思います。
    もう一度言いますと、まず、具体的な対策を講ずべき問題と受けとめるかどうか。第2に、対策を講ずべきとした場合、どのような対策が有効・適切であるかというようなことを中心にご意見をお出しいただけると、今後取りまとめに当たっても、またこの問題を提起していく上でも参考になるかと思いますので、そのあたりを中心にご意見をお出しいただければと思います。いかがでしょうか。
    中村委員は、何かこの東京都の条例の4条を出しておられるのですが。
  • 中村委員
    では、ちょっと。
  • 堀部会長
    どうぞ。よろしくお願いします。
  • 中村委員
    この問題を考える根拠としては、ずっと条例4条にいう適正な請求かどうかということしかないような気がしていたものですから、今まで、例えばその権利濫用の一般法理での対処というのは一体どういうことかとか伺ったことがありますが、いずれにせよ、東京都の場合は依拠するものがない、つまり濫用とか実際に対応していくのに窓口でも難しいとか、依拠するものがないということが次第にわかってきたわけでございまして、今回のように事例の類型というものが示されたので、やっと具体的に適正か否かという問題が見えてきたというような気がいたします。
    それと、審査会のほうを長年やってきた中で……
  • 堀部会長
    ええ、はい。実際にやっておられるとよくわかりますね。
  • 中村委員
    はい、考えますと、随分いろいろな事例がありまして、そして、それについて最終的にどう処理されたかというのがなかなかわかりにくかった。非開示ということもありましたし、苦労して開示の手続をしても取りに来ないという、特定のケースが多かったのを覚えています。
    次第に、個人情報も含めて、不適正と思われるケースというのは非常に増えてきた。はっきり言えば、4条でこのような文言はあるのですが、ある意味では手がつけられないできているのではないかと思います。ですから、他の自治体の例等を見ますと、静岡県などは平成12年にこの問題をやはり取り上げているわけで、私は当然、具体的な対策というのは必要であろうと思います。
    そして、大体どんな対策が適切かと問われましたけれども、やはりこれには事務を扱う主務課の負担というのが、前回も出ていましたように非常に障害の多いケースというのがあるわけですので、そこら辺がちゃんとどう対応できるか、どう対応すればいいかという、依拠できる文言というのが必要になるんじゃないかと。解釈・運用をですね。
  • 堀部会長
    はい、解釈・運用。
  • 中村委員
    ええ、それについての文言が必要になるのではないだろうかと。今のところはそういうことです。
  • 堀部会長
    そうですか。はい、ありがとうございました。
    というぐあいで、いろいろご発言いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
    秋元委員、いかがですか。
  • 秋元委員
    今回、この資料をもらいまして、今度は権利の濫用かということで、ちょっとあまり時間がなかったんで十分いろいろなことを考える時間がなかったんですけれども、今、中村委員がおっしゃったみたいに、私も都の中のこの第4条というのが、とてもいい4条なのかなというふうに思っておりました。
    ここのところで、「適正な請求に努めるとともに」、「情報を適切に使用しなければならない」とあって、運用のところの、中村先生もおっしゃっていますが、その3のところの「権利濫用の一般法理」というんですか、そこの部分のところを十分使い切っていくということが、この問題を考える場合大きいのではないかと感じておりました。
    それから、幾つか事例を出していただきまして、東京都が大変、大量の文書の公開のところで困っているのが、事例の中でよくわかったんですけれども、一つ住民の場合といいますか、一般市民がいろいろと情報公開をしていく場合に、やっぱりどこをどういうふうに請求していったらいいのかというのは、とてもわからない部分であって、具体的にはどう請求していいのかわからないというのはかなり多いんじゃないかと思うんですよね。
    条例のここのところの幾つかのところにも、そういう場合にはきちんと行政の側がどういう文書があるとか、こういうのを特定するような、公文書を特定するための必要な事項とか情報とかを提供しながら公文書を特定するようにディスカッションしなさいというふうなところもあるんですけれども、それでもなおかつわからなくて、たくさんのものを請求してしまうということはあるのではないかなと思います。
    特に、今、市民オンブズマンが結構いろいろなそういう情報公開をつくって市民の知る権利というのを行使していることが多いと思うんですね。で、よく市民オンブズマンがやるのは、行政の不正を正してみたりとか、環境問題で行政のやっているようなことを割と批判的な目で見た情報公開請求が多いのではないのかなという気もしますので、そういう意味では、どういったところで権利の濫用というふうに行政の側がおっしゃるというところの解釈の仕方というのが、とても難しいかなというふうに思うんです。
    一つ、今回いろんな事例を示していただきましたけれども、例えば逆に市民の側から請求しているようなものに対して、市民のほうで請求している側の市民オンブズマンからのお話を聞いてみるとか、そういうようなことも情報として取り入れながら、どういう対策が有効かということを考えていただけるといいのかなというふうに、一つ思いました。
    それから、情報公開請求がどんどん増えているということであれば、そこを上手に回す人の配置とか、書類の上手な管理の仕方とか整理とか、そういったことも機能的にできるような仕組みというのが必要なんじゃないのかなというふうに思いました。
  • 堀部会長
    ああ、そうですか。ありがとうございました。
    確かにご指摘のようなところもあります。判決でもそういうような指摘をしている、東京地裁の判決はそういう指摘をしているところもありますので、確かにそういう点も十分配慮しなければならないところだろうと思います。
    いかがでしょうか。
    岡部委員、じゃ、よろしくお願いします。
  • 岡部委員
    いろいろご説明伺っていまして、また現状を伺っていますと、明らかにこの第4条の趣旨に反している事例が積み重なってきていると。それは認識いたしました。
    その結果、当然、ほかの自治体等で対応されておられるように、東京都におかれましても現在、運用で極めて一般法理に任せているというところになっておりますが、やはりほかの自治体の事例のような形で、いわゆる都民の方々に情報公開を求めるときの、権利濫用か否かということを認識させるような何らかの対応は必要かなと感じた次第であります。
    その場合は、ほかの自治体がやられているような幾つかの事例がありますが、何か包括的な第4条、さらに少し詳しくしたような包括的な運用基準が必要なのかどうか、さらには、明らかに悪意の請求、これは排除していかなきゃいけないんですが、やはり都民の方々の情報公開、知る権利というものをいたずらに制約してはいけないという部分も、微妙なデリケートな分もあろうかと思いますんで、悪意なのかどうなのかという部分のボーダーラインのようなところを、これをどうしていくか。マニュアルのようなもので、現場の事務の判断で対応されるのがいいのかどうか、難しいかなと思っております。
    包括的な解釈規定があって、その下にネガティブな事例規定みたいなものがあって、それがマニュアルなのかどうかという。
    ただ、ボーダーラインのようなところ、どういうものがあるか、ちょっと私も想像つきませんが、いたずらに都民の知る権利を制約してはいけないかなという印象も持っておりますので、そこら辺は大いに今日議論していくべきところかなと思っております。
    まずは、現状にさらに深めた形でやっていただいて、都民にその権利と責任の関係を認識していただくことが重要じゃないかと。そんな印象、意見でございます。
  • 堀部会長
    ありがとうございました。
    相馬委員、いかがでしょうか。
  • 相馬委員
    相馬です。
    事前に送っていただいた資料は、今日の特に権利濫用が疑われるケースの例示などをお聞きをしまして、やはり何らかの濫用の禁止規定などは必要なんじゃないかなという認識は持ちました。
    特に、ほかの県の例も出ておりましたので、さまざまな考え方はあるんだろうというふうに思いますけれども、ここは、先ほど岡部委員もおっしゃっていましたけれども、一つのガイドラインというかボーダーラインといいますか、そういうような目安をどういうふうに、じゃ定めて、それを超えるものをどういうふうに取り扱っていくのかというようなところについては、やっぱり議論を深めていった上でということは必要なのかなというふうに思います。
    特に、一般的に社会通念上というような表現も、群馬県の中では、その範囲を超えて個別に判断をするというところですが、ここのところの見方だとか考え方というのが非常に慎重に、やっぱり議論すべきものなのかなというふうに思いますんで、そこは、さらに議論はしていくことになるんだろうというふうに思いますけれども、そういった部分で考えていったらどうかなというふうに思います。
  • 堀部会長
    そうですか。はい、ありがとうございました。
    では、藤原委員、いかがですか。ご専門の立場もありますので、ご発言いただければと思うんですが。
  • 藤原委員
    この問題は、以前から議論をされているところですけれども、規定を置くことについてですね、濫用規定を明文で置くことについて。情報公開を今まで推進してきた、あるいは運動にかかわってきた立場からすれば、恐らく情報開示請求権のようなものの濫用ということを言うこと自体が、人によっては自殺行為であるというかそういう立場もあろうかと思います。
    ただ、一方、理想論ではなくて運用の現実、現実がどうなっているかという観点から議論するという立場もあると思うんですね。
    個人的には、行政のリソースの有効・効率的な利用という観点であるとか、結局のところそのコストというものは都民の負担においてなされているという、そういう観点を入れれば、やっぱり何らかの対策は必要なのではないかというふうに思うわけです。
  • 堀部会長
    すみません、今のコストを本人負担にするというのは。
  • 藤原委員
    いや、要するに、これ、濫用的事例……
  • 堀部会長
    例えばアメリカ流サーチフィーみたいな。
  • 藤原委員
    あ、そういう意味ではないです。
  • 堀部会長
    それでなくて。
  • 藤原委員
    そういう意味ではなくて、この濫用の周辺で、行政の側が、つまり都の職員の側が膨大な時間をそれにとられるという事実があるわけですね。
    そこに要している費用というのは、結局のところは都民が負担をしているんだというそういう意味です。公のものというのは結局そういうことですから。
  • 堀部会長
    ええ。そういう趣旨ですね。
  • 藤原委員
    ええ。今、申し上げたのは、そういう趣旨。いわゆる手数料のところの趣旨ではなくて、濫用事例を解決するためのさまざまなコストというのは、結局、それは本当は都民の時間とお金を使っているんだという、そういう意味ですね。
    その対策ですけれども、もし何かやるとして、要するに最初に来るのは現行の条例の解釈・運用ということになりますよね。現行の条例の解釈、運用でどこまでできるかというのを類型で考えるということですよね。
    それはそれとして議論できると思うんですね。この、今日いただいた資料の「権利濫用が疑われる事例の類型と概要」で、現行の条例での解釈、運用としてどこまでやるかという問題は、そういうアプローチは一つあり得ると思うんですね。国が言っているように、特定の問題で対処する、特定ができていないとか。
    ただ、片方で裁判例がありますので、どこまでできるかはともかく、特定の問題ではないかとか、一般法理でいくものとか、いろいろあるとは思うんですね。さらに言えば、東京都の審査会の意義に期待するという、それもあろうかと思いますけどね、審査会の判断に期待する。検討の初めは解釈・運用というのがあり得ると思うんですけど、ただ、2番目としては、やっぱりそうは言っても結局、解釈で対応できない部分、これまでの運用で対応できない部分をどうするかという問題が、多分残る。
    残った部分について、運用基準、一部の意見のように運用基準レベルでやるのか、何らかの対策は必要なんだけれども、それは運用基準のレベルというか、国の検討会だとそれをガイドラインのレベルでやりましょうと言っているわけですね。そのことの意図は、濫用規定は置きたくないという意味でもあるんですけれども。ただ、そういう立場もありますけれども、さらに言えば、それとは違った立場として、条例で正面から根拠規定を置くべきであると。で、正面から議論したほうが、本当は長い目で見たらいいんだという立場もあると思うんですね。
    ガイドラインは、確かに柔らかなソフトな手段ではありますけれども、本当は権利・義務関係の議論をするわけですから、したくないのはわかるんだけれども、本当は条例レベルではないかという気はします。そこは、だから解釈・運用のものと、ガイドラインレベルのものと、正面から条例に置くという、3つぐらいアプローチがあるのかなという気がするということですね。
    で、準備作業としてやらなきゃいけないのは、先ほど岡部委員から抑止力のお話が出て、改正の前後でどうなっていますかというご質問が出たのですけれども、やっぱり一般法理ではだめで、情報公開条例に規定を置かなきゃいけないということの意味ですね、そこのところをはっきり出さないと、いずれにせよ議論は審議会のレベルでも議会のレベルでも都民に対するアピールでも、どうして一般法理ではだめで条例に規定を置かなきゃいけないんだということを、明確に説得的に書けるか、説明できるかどうかかなと思います。
    つまり、効果としては、もちろん先ほどから既に秋元委員からも岡部委員からも出ましたね、萎縮させるマイナスの効果としては、都民の知る権利一般に影響を及ぼさないかという観点があるわけですね。ただ、他方で、この類型を見てみますと、今日の資料の類型を見てみますと、熱心に運動しておられる方とか一般の都民の方というよりは、どちらかというと、他の都道府県でもそうですけれども、許認可行政に不満を持っているとか、自分の人事に不満を持っているとか、あるいはおよそ考えられないセンシティブな情報を、とにかく自分が主観的意図で請求しているとかですね。恐らく普通にこれまでやってきた情報公開を進めようという運動の方々の事例ではないと、私は推測しているんですね、この類型はですね、他の都道府県から見て。
    だから、そういったところをきちんと説明できるかどうかという話でもあろうかと思うんですね。
    例えば、横浜市は濫用の規定を置きましたけれども、運用基準をつくって、一応どういう効果を持つかどうかはともかく、パブコメを運用基準についてやりましたよね。パブリックコメントで、市民の意見を聞くという手続は踏んでいるわけですね。ただ、もちろん、そういう規定を置くこと自体に議論があるわけですけれども。だから、そういうことを考えなきゃいけないのかなというふうには思います。
    片方では、判例として、行政の情報管理が万全でないというような点も指摘する、いろいろな議論を呼んだ15年の東京地裁の裁判例がありますけれども、恐らくここに出ている類型というのは、やっぱりあの類型とは違うと思うんですね。
    車検の登録システムがうまく運んでないではないかというのとは、少し違うと思うんですね。ここに出ている、今日の資料に出ている類型というのは。だから、やっぱりそこのところをもう少しきちっと詰めて議論をするということが大切なのかなと。
    要するに、なぜ一般法理ではだめなのかというところですね。やっぱり説得的に都民全体にも、もし改正するんだったら議会にも、きちんと説明できなきゃいけない。逆に、本当は僕はそこが説明できたら、やるべきことはガイドラインよりも条例のレベルにしたほうがいいというのは、昔からの立場です。
    やっぱりガイドラインは確かにいい手段ではあるんですけれども、まさしく権利にかかわることなので、本当は条例レベルが望ましいのではないかと。他のところで、要綱レベルで自分でも関与したことがあったんですけれども、ずっとそれを悩んでいたことは事実です。ただ、もろもろの事情で要綱ということにはなったんですけれども。
  • 堀部会長
    ありがとうございました。
    今まで出ました意見をまとめていただいたりしまして、ありがとうございます。
    この問題は、先ほども言いましたように、対応に苦慮をしているところがありまして、どのような方法がいいのか。何らかの対応策が必要だというのは、今日の意見ではそのようにまとめることができるかと思うのですけれども、具体的にどう対応するかとなると、これは難しいところでもあります。
    そこで、他の自治体の例で見ますと、私は神奈川県の審査会のほうにかかわっていることもありまして、今日の資料で言うと、6頁のところに神奈川県の例があります。
    私は審査会のほうですので、直接こういう運用については扱わないのですが、最初から条例づくりにかかわっていたこともあって、いろいろな形でよく意見を求められたりしてきました。
    そういう中で、どうすべきなのかということで、神奈川ではこのような方法をとったということです。いろいろ議論はしてきております。そういうこともあって、また、国の「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」の議論が、行政改革委員会行政情報公開部会で、1995年の3月から1996年の11月まで行われましたが、その間に、こういう大量請求の問題というのはどうするのか、実際に議論をしてきているものですから、そういうことも問題提起したことがあります。
    国の現行の法律には、権利の濫用という形の規定は入れませんでした。そのときにもどうするかということが議論になりました。この前、2回前だったでしょうか、中村委員が一般法理でどうなのかという問題提起をしましたとき申し上げたと思うのですが、法の世界では、「権利の濫用は、これを許さない」という一般法理があり、民法にも明文の規定がありますので、それで対応ができるのではないかということになりました。
    大量請求という言葉も、1996年の4月に出しました中間取りまとめでは大量請求という言い方をしたように思いますが、実際に法律にするときには、回答期限を延ばすというような形で対応するということになりました。
    最近では、藤原委員、行政透明化検討チームでしたか、情報公開法の改正の議論をして、8月に取りまとめを出しています。
  • 藤原委員
    行政透明化検討チームですね。
  • 堀部会長
    行政透明化検討チームですね。今、国でも議論になっています。今後、東京都でも、現行の情報公開法の改正との関係でも論じられるところではないかと思いますが、そういう状況がありますので、東京都としてどう対応していくのか。今日意見をいろいろとお出しいただきましたが、そのような動きも見ながら、進めていくことになると思います。
    今日の権利濫用という問題には、何らかの対応策はとるべきではないだろうかという点では、おおむね意見の一致を見ているというふうに思います。
    どうぞ。
  • 藤原委員
    補足をしておきますと、現実的なことを考えればですけれども、国のほうの状況は、ガイドラインを作成して適正な運用を進めることより対処することというと。それとのにらみということもあろうかと思いますね。
    これは、若干、ある法律雑誌に僕は書いたんですけれども、要は、補正等との関係で何らかの客観的指標、外形的指標というものが書けるのであれば、それはある程度はやっぱり使えるし、その後審査会等でも使えるんじゃないかと。具体的には、考えたときは、1年というのはいいなと昔思っていたんですけれども、ただ、先ほどの裁判例のように行政側の事情というのは確かに考慮しなきゃいけないとなると、客観的メルクマールだったら、枚数とかそういったもののほうが確かにいいかなと思って、一定の枚数というのを、例えばということで。それは、自治体の規模とかいろいろなことの要素によるんでしょうけれども、指標がいるというようなことです。で、それは本当は濫用のメルクマールにもなるけれども、濫用のメルクマールになるものをどこで使うかですね。補正のところで使うのか、一般の解釈・運用基準、それは特定も含めてですけれども、まず使って、それだけはきちんとオーソライズして、具体的に窓口あるいは担当が使えるようにしていくかなというのはあろうかとは思います。
    それは、濫用ということを条例に置くかということについて、まだ多様な意見があるという前提でですけれども。
  • 堀部会長
    ありがとうございました。
    それでは、今日のご意見を踏まえ、また具体的な事例との関係でも、今日具体的に出していただいたようなものにどうすれば対応可能なのかということも含めて、事務局と相談してまとめてみたいと思います。
    その際には、岡部委員からご指摘がありましたように、一方では都民の知る権利があります。これは今度の情報公開法の改正の議論の中でも、知る権利を第1条の目的に入れるということになりそうです。これを規定するかしないかは前から議論のあるところで、今に始まったことではありません。
    自治体は、90年代後半に条例を改正するときに、その前から知る権利を入れた条例もありますけれども、知る権利を入れるようになったところは増えてきまして、東京都では前文で「知る権利」というものを入れたりもしています。
    そういうこととの関連というのは常に出てくるところでもありますので、その知る権利を減殺しない、縮減しないような形でどういう方法が可能なのかということで、具体的に考えてみて、提案をさせていただきたいと思いますが、そういうことでよろしいでしょうか。
  • 藤原委員
    例えば、この今日の1頁に事例の類型と概要が挙がっていますけれども、アのところは、少なくともすべてに通ずるのは繰り返しているという点ですよね。これ、単発だったら、なかなか自分の紛争解決のために情報公開制度を1回限りで利用しよう、あるいは、その紛争との関係で利用したいと言ったって、それは濫用だとは思いませんよね。後ろに、「あるいは」以下の文章があるから、多分濫用的だということですよね。
  • 堀部会長
    ええ。
  • 藤原委員
    だから、例えば繰り返しというメルクマールをどう考えるかですね。
    そういうので書いていけばいいのかなと思うんですね。
    あと、ちなみにさっきの目的ですが、知る権利が出ましたけれども、知る権利、説明責任も大事ですけれども、同時に個人的には地方の場合は、本当は地方自治の本旨というほうが魅力的だとは思っているんですけれども、それはまた別のところで。一緒に、同じぐらいのレベルで重要かなとは思っているんですけど。
  • 堀部会長
    一通りご意見を伺いましたけれども、さらに今までお互いに意見を出していただいたところで、こうしていったほうがいいのではないかとか、あるいはまたもう少し、こういう点について調べてほしいとかというのがありましたらご発言ください。
    先ほども出ましたのでは、東京都の審査会のほうで、何か議論になっている例があるのかということです。中村委員は、審査会も経験されたわけですけれども、どうですか。
    これは、私が関係している審査会などでは、時々そういう議論はしていますが、それを答申の中に書くというのも書きにくいところもあったりします。これ、国の審査会の答申の中にそういう付言か何かありますか。
  • 藤原委員
    いや、特に。
  • 堀部会長
    そこは調べてないのですけれども。
  • 藤原委員
    濫用ですか。
  • 堀部会長
    濫用。
  • 藤原委員
    濫用についての付言はないと思いますけれども、濫用的事例を原処分で行政文書の特定の問題だと言ってきて、それを特定の問題と考えたことは正しいというか妥当であるという、そういう形の解決の仕方はあったと思います。
  • 堀部会長
    ああ、そうですか。
  • 藤原委員
    個別案件の審査ですから。先ほど申し上げたのは、審査会で一度判断してもらうというのは、別に付言という意味じゃなくて、具体的案件の中でという意味を含んで申し上げたつもりなんです。
  • 堀部会長
    ええ、そうですか。
    実際に窓口でその請求を受け、それを、原課といいますか、そこに問い合わせたりしてみると、それは膨大な文書量である、それはすぐには対応できないとか、あるいはこのような特定の仕方ではどの文書なのかわからないとか、そういうのはかなりあるというように聞いています。
    秋元委員が言われるように、確かに請求をする側からすると、どういう文書があるのかということがわかりませんので、どうしてもあれもこれもということを言ってくるところはどこでもありまして、そこを今後どうするのか。いろいろなITを使うことによって、特定の仕方なども変えることは可能だというふうにも考えているところもあるのですけれども、今までの文書の扱い方ですと、確かにその文書名だけというのでは、なかなかわかりにくいと思います。
    都民の側、請求する側からすると、どういう文書があるか、文書目録をつくるというようなことも、最初からやってきているのですが、ただ、これもよく聞くのは、あれを見てもどこに何があるのかとわからないというのです。ということは、結局、窓口に来て相談して、こういうことを知りたいというときに、どういうふうにするか、こういうことになってくると思います。いろいろ具体的な問題としてはあります。
    中村委員、どうぞご発言ください。
  • 中村委員
    ちょっと繰り返しになってしまうかもしれないんですけれども、先ほどおっしゃられた濫用のメルクマールとして枚数ということを、入れられるかどうかという話もありました。その辺りは、私もまだわからないんですが、恐らくこれからその手数料をめぐって営利・非営利で区別するかというところで、また大量請求に係る問題というのが出てくるかと思うんですが、やはり今までの経験で言うと、濫用というには、繰り返し性など特定の傾向があるということが一番難しい問題なのではないかと思うのです。
    それで、確かに、知る権利からの懸念はあると思いますけれども、それが大量で、またどこにあるかわからないというものというのは、ある程度、窓口の対応やその後の対応でこなせるものではないかと思うんですね。
    そこで、それがとりわけ長引いたり、都民の知る権利が阻害されるような対応というのは、それはあまりないような気がいたします。むしろ、濫用と言った場合には、やはり請求者の繰り返し性その他、窓口でも明らかにわかる傾向ですね、そういうものを何とか考えるべきじゃないかなと思うんです。ですから、さっきから藤原先生も言ってらっしゃるような根拠、規定といいますか、そういうものが書かれるべきではないかなというふうに思います。
  • 堀部会長
    わかりました。大体というか趣旨はよくわかりますので、またどうするかということですね。
    そういうことについてさらに何かご発言があればと思いますが。
    事務局のほうで、今までの議論をお聞きになって、どうですか。高橋部長のほうで、一般的なあるいは、この段階でこうすべきだということでなくて、何かご発言ありましたらお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  • 高橋都政情報担当部長
    いろいろご意見を出していただいてありがとうございます。
    事務局のほうでも、いろいろ事例を調べてまいりまして、今回のお手元の資料のようにまとめさせていただいて、ある程度類型化しております。これは、具体的にあまりお手元の資料では書かせていただいていないんですが、かなり具体的に書こうとするとどうしても個人なりその請求者の特定に及んでしまうというような懸念がございまして、ちょっと抽象的な表現にさせていただいております。
    そういうことであまりインパクトがないような書き方、整理になっておりますが、実際これを受けているところでは、大変苦慮していると。それは、会長さんのお話のとおり、どこの自治体でも、東京都だけではなくというような実態であろうと思っております。
    それで、実は私どもとしても、この問題、どういうふうに対処していいのか、苦慮している状況でございまして、一つは、先ほど来お話が出ております、知る権利の阻害要因にならないような対応なり配慮が必要だということがございますし、あるいは秋元委員のおっしゃられるように、確かに請求者側から見て、実はこういう情報が欲しいんだけれども、何をどういうふうに請求していいかわからない。ご本人、こういう情報が欲しいんだけれどもと言っている、その「こういう情報」というふうになかなかご自分でも特定できていない場合もございますし、そういうような場合に窓口でのやりとりを通じて、具体的な文書を特定していくという作業が必ず必要になってくるんですが、そこがうまくいかないケースがやはり中にはあるんだろうなと思います。
    ということで、縷縷、資料も整理してご提示をさせていただきましたが、正直言って事務局でも困っていると、どういう対応をしていいのかよくわからないと。ということで、国の動向、あるいは他の自治体の動向等も、それから、現に私どもが受けている請求の実態なり傾向なり動向なりを考えながら何らかの対応ができればなというふうに考えているというような状況でございます。
    以上でございます。
  • 堀部会長
    よくわかりました。
    ということですので、先ほど言いましたようなことで、今日のご意見など踏まえて、もう少し整理してみてまとめをしていきたいと思います。
    ということでよろしいでしょうか。
    この前の営利目的請求につきましても、全体の取りまとめは来年の5月あたりを予定していますので、そのときということになります。今日のそれぞれご発言をいただいたことで趣旨は理解できましたので、それを踏まえて取りまとめてみたいと思います。ほかでもいろんなことで議論をしてきていますので、そういうことも考えながら進めていきたいと思います。
    諸外国でもいろいろな形でこのことは議論になっていまして、先ほどの例でもありましたように、いろいろ議論をしているところもあります。既にそれぞれ長い間の経験がありますので、そういうことも見ながら、議論をしていきたいと思います。
    ということで、本日のこの権利濫用的請求につきましては以上にとどめさせていただきまして、次回は、それとも関連してくるところもありますが、営利目的請求とも関連してきます開示手数料について、少しまたご議論をいただくことを予定しています。いずれにしても、まとめは来年に行うということで、次回は開示手数料について、問題を取り上げていくようにしたいと思います。
    それでは、どうもありがとうございました。
    以上が審議事項ですが、次に報告事項が2つあります。
    1つは、情報公開制度の運用状況についてということで、これについては、それでは石岡係長からお願いいたします。
  • 石岡情報公開係長
    それでは、情報公開制度の運用状況についてご説明をさせていただきます。資料2をご覧ください。
    資料2は、平成21年度東京都の情報公開制度の運用状況をまとめたもので、平成22年7月29日にプレス発表をさせていただいたものでございます。
    最初の1枚は両面になっておりますが、こちらが概要版となっておりまして、2枚目以降が情報公開制度運用状況年次報告書の本体となっております。
    それでは、概要版を中心にご説明させていただきます。
    まず、概要版の1頁目の上のほうに四角で囲まれている部分がありますが、こちらに記載されておりますように、平成21年度の特徴といたしましては、開示等の決定件数は、過去最高であった平成20年度に比べまして25.3%、件数にいたしまして1,478件と、前年度よりさらに大きく増えたこと。それから、内容別決定件数を見ますと、工事設計書の開示決定が大きく増加したことが挙げられるかと思います。
    それでは、1、開示請求の処理状況についてご説明いたします。
    平成21年度開示等決定件数は7,311件になっております。内訳を見ますと、開示が4,686件、一部開示が2,052件、非開示が35件、不存在等が538件となっております。開示決定等の件数のうち、開示決定及び一部開示決定の占める割合は92.2%となっております。
    情報公開制度の開示等決定件数の推移を下のグラフで示させていただいております。
    昭和60年度に制度が始まりまして、最初は100件から200件程度でございましたが、徐々に増加しておりまして、平成7年、8年度に一度ピークを迎えております。これは、食糧費関係の請求が増えたことに原因がございます。
    その後、増減を繰り返しまして、平成17年度からは右肩上がりとなっており、平成21年度は先ほど申しましたとおり7,311件と、過去最高の件数となっているところでございます。
    裏面をご覧ください。内容別決定件数上位5つを示させていただいております。一番多かった請求内容は、当審議会でも速報値でご紹介させていただいておりますが、昨年度に引き続き工事設計書が2,804件で全体の38.4%となっております。20年度は1,051件ですから、約2.67倍と急増しております。以下、建築計画概要書関係、食品営業許可台帳、医療法人関係、法人設立・設置届出書となっておりまして、上位5位までで全体の51.2%を占めております。
    1位の工事設計書と2位の建築計画概要書関係は、19年度、20年度と順位は変わりありません。3位から5位も順位の入れかわりはありますが昨年度と同じ内容が並んでおります。
    次に、開示請求者の内訳でございますが、東京都の区域内に事務所または事業所を有する個人及び法人その他の団体からの請求が一番多くなっておりまして4,252件で、全体に占める割合は58.2%となっております。この全体に占める割合は、平成20年度の45.2%からさらに増えておりまして、先ほどご説明しました内容別決定件数の上位5位の内容とあわせてみましても、やはり営利目的と考えられる請求の割合が一段と高まっているというのが平成21年度の特徴でございます。
    次に、2の不服申立て件数及び情報公開審査会の運営状況についてご説明いたします。平成21年度の不服申立て件数は38件と、前年度より11件減っております。審査会は、総会1回と3つの部会の運営状況を合わせると31回開催しておりまして、答申は39件出しており、こちらは2件増えております。
    続いて、3番の情報公表・提供の状況についてですが、公表件数が521件、提供件数が5,884件となっております。特に、提供件数が平成20年度より1,072件と大幅に増加しているのが特徴でございます。
    概要版の説明は以上です。
    続いて、情報公開の運用状況報告書の本体についてご説明いたします。ただいま概要版のほうでご説明させていただきました部分については省略させていただいて、その他の部分について簡単にご説明させていただきます。
    まず、3頁をお開きください。こちら、実施機関及び局別の開示請求処理状況についてまとめたものでございます。表3ですが、平成21年度に開示決定等の件数が一番多かった局は建設局となっておりまして、1,269件で全体の17.36%を占めております。やはり、工事設計書の請求が急増した影響と考えられます。
    続いて、都市整備局が953件で全体の13.04%、福祉保健局が件数としては22件減って871件、全体の11.91%となっております。この3つの局だけで全体の4割を超えている状況でございます。
    少し先に進めさせていただきます。11頁をお開きください。
    3の、東京都情報公開・個人情報保護審議会の運営状況についてご説明させていただきます。東京都情報公開・個人情報保護審議会については、平成21年度は5月と10月、2月の合計3回開催させていただきました。
    以上、簡単ではございますが、平成21年度の情報公開制度の運用状況のご報告を終わらせていただきます。
  • 堀部会長
    ありがとうございました。
    ただいまの報告につきまして、ご質問、ご意見をお出しください。
    昨年度は7,311件ということで過去最高ということですが、これを形式的に言いますと、国の行政機関への開示請求が、今正確な数は持っていませんが大体7万件台なのですね。東京都の人口が、日本の10分の1ぐらいですか。そうすると、全く請求内容にかかわらず数だけ言うと、国の行政機関の10分の1ぐらいの開示請求に当たると言えます。内容に触れずに、そういうことを言うのもどうかと思うのですけれども、この数字を見てそういう印象を受けました。
    いかがでしょうか。
    それでは、次に個人情報保護条例の運用状況につきまして、これは土居係長からお願いします。
  • 土居個人情報係長
    それでは、引き続きまして、平成21年度東京都の個人情報保護制度の運用状況についてご説明させていただきます。資料3の概要版のほうをご覧ください。
    個人情報につきましても、情報公開と同じく、本年7月29日に報道発表させていただいております。
    まず、1番目の保有個人情報を取り扱う事務の届出状況でございますが、毎月、先生方にお送りしているものでございますけれども、平成22年3月31日現在の総届出件数が3,582件でございます。これを実施機関別に見ますと、福祉保健局が最も多く817件、続いて都市整備局が329件、産業労働局315件となっております。
    これらにつきましては、すべて毎月、皆様にお送りしております事務ごとの個票の形でそのまま東京都のホームページで公開させていただいておりますので、どなたでもご覧いただけるようになっております。
    2番の開示・訂正・利用停止請求の処理状況でございますけれども、平成21年度は1,085件でございました。20年度から比べますと1件の減少でございます。
    下のグラフを見ていただきますと、平成17年度、平成18年度に大きく増えているのがわかると思います。平成17年度は、条例の改正によりまして新たに職員情報を開示請求できるようになったためにその請求が164件あり、それに伴いまして増となったものでございます。
    平成18年度は、実施機関に警視庁が新たに加わりましたことによりまして、その請求が152件ありまして、その分が増加しております。平成20年度につきましては、こうした制度上の変更はございませんでしたが、警視庁が166件増えましたために1,086件ということになりました。平成21年度もこの警視庁が多いという傾向が続いております。
    お手数でございますけれども、年報本文のほうの6頁をご覧ください。
    こちらに、実施機関別の請求件数が出ておりますけれども、一番下から5つ目になりますが、警視総監のところが321件でございまして、この実施機関の中でご覧いただいても21年度も最多でございます。これに、福祉保健局が274件、病院経営本部が208件、教育委員会が93件ということで続いております。
    近年、この警視庁が増えた理由といたしましては、一つは警察に相談した記録を、離婚の訴訟ですとかDV防止法の保護命令の申立てなどの資料にすることが定着しつつあるのではないかと思われます。もう一つは、特定の個人が大量請求を繰り返しているということがございまして、こうしたことによりまして警視総監に対する開示請求が大幅に増えていると考えられます。
    すみません、また、初めの概要版のほうにお戻りいただけますでしょうか。
    こうした請求に対しまして、全部開示と一部開示を合わせまして87%が開示されております。一方で、不存在が130件となっております。平成19年度以前はおおむね50件程度でありましたけれども、20年度から急増しております。中身を見ますと、ある特定の請求者が、当初から存在しないことが明白である資料や、請求権のない資料を開示請求するというケースが多くなっていると思われます。
    それから、訂正請求が1件、利用停止請求が2件ございました。訂正請求につきましては教育職員の情報に関するもの、利用停止請求は教育職員の情報に関するものが1件、110番処理簿に関するものが1件で、いずれも非訂正・非利用停止となっております。
    裏面をご覧ください。開示請求の内容別の決定件数の上位5位までを挙げたものでございます。一番多いのが診療情報関係で、これはご自身のカルテの開示請求でございます。これは、毎年最も多く、おおむね全体の2割から3割を占めております。
    2番目と5番目が警視庁の関係で、110番を受け付けた際の記録であります110番処理簿と、警察にご相談に出向かれた方の生活安全相談関係でございます。これらは、先ほど申し上げたように訴訟等の資料として定着してきたことと、特定の個人の方の複数回開示請求によりまして多くなっております。
    3番目が、職員情報関係で、これは教育職員の方がご自身の業績評価や任用関係の資料を請求されるというのが多いということでございます。
    4番目の身体障害者手帳関係でございますが、これは愛の手帳の等級等の判断基準でございます。この判断基準につきましては、各種の補助金等を申請する資料に添付する必要があるということで請求が多くなってございます。
    3番の不服申立て件数及び個人情報保護審査会の運営状況でございますが、不服申立て件数は、平成21年は23件で、前年に比べまして11件減少しております。それから、個人情報保護審査会は30回開催されまして26件の答申が出されております。また、21年度に新規に諮問された案件は22件ございまして、平成22年3月31日現在において審議継続中の案件は11件でございます。
    4番目の相談受付状況でございます。個人情報保護に関する相談件数は1,299件で、前年より122件、9%減少となっております。ご相談の中身を見ますと、個人情報保護法が全面施行された17年当時と比べまして、いわゆる過剰反応と言われるような相談は減ってきているという感じがいたします。同時に、事業者から個人情報の取扱いについてのご質問が増え、少しずつ事業者の間にも個人情報の適正な取扱いについての意識が高まってきているのではないかと思われます。
    最後に、都民・消費者からの苦情の対象分野でございますけれども、平成21年度は情報通信分野が最も多く72件でございました。内容といたしましては、不当架空請求、ウェブ掲示板トラブルなどでございます。ちなみに、平成20年度に125件ございましたストリートビューに関する苦情・相談につきましては、21年度は13件と激減しております。
    次の、金融・信用情報でございますが、サラ金や保険の勧誘などでございます。保険や融資の申込みをした方から、審査ではねられた後に詳細な情報を記入した申込書を返却してもらえないというような相談がございます。
    3番目の不動産業でございますが、これはマンションのしつこい勧誘に関するものが多いほか、金融・信用情報と同様に、不動産の売買・入居で申込みをしたけれども融資等の審査ではねられて契約できなくなった場合の申込書の返却をめぐるものが多く見られます。
    4番目の医療・福祉につきましては、カルテ開示や病院の個人情報の取扱いについての苦情となっております。
    平成21年度の東京都の個人情報保護制度の運用状況につきましてのご説明は、以上でございます。
  • 堀部会長
    ありがとうございました。
    個人情報制度運用状況につきまして、いかがでしょうか。
    先ほどの説明の中に、1人で請求件数が多い方がいるということなのですが、これもそうすると自己情報開示請求権の本来の目的とは異なるような請求と見ることも可能なのでしょうか。
  • 土居個人情報係長
    個人情報の開示につきましても、ある数名の方が大量に繰り返されているという現状はございます。
  • 堀部会長
    ああ、そうですか。
    例えば東京都にある、自分に関する情報を全部開示請求したらどうなるのかというようなことは、この条例の制定のときにも議論しました。特定してもらわないとそういう請求には応じられないだろうというようなことは、当然といえば当然なのですが、中にはそういうことも起こり得るので議論しました。これは、そういう請求ではないわけですが、一般的に、大量請求にどう対応するのかということは、今後の課題としては議論しておかなければならないところだろうと思います。
    いかがでしょうか。
    どうぞ、藤原委員。
  • 藤原委員
    今の、特定の人がたくさん請求するという場合、結果として必ず不服申立てもするというところまでつながっているんでしょうか。
  • 土居個人情報係長
    それぞれでございまして、存在しないものを繰り返し請求されるという方が多いわけですが、その存在しないということで非開示になったことに対して不服申立てを何回もされるという方もいらっしゃいます。
  • 堀部会長
    いかがでしょうか。
    本日予定した議事は以上ですが、何かこの際ご発言があればお願いします。
    特にないようでしたら、高橋部長から今後の予定等につきましてお願いいたします。
  • 高橋都政情報担当部長
    長時間、ありがとうございました。
    次回の予定ということで、若干お話をさせていただきます。次回、第47回の審議会ということになりますけれども、それぞれの委員の皆様方のご都合等をいろいろ事前に調整をさせていただいた結果、11月15日午前中ということで開催を予定させていただくこととなりました。
    審議事項としては、先ほど来お話に上がっております開示手数料についてということで、開示手数料につきましては計2回、ご審議をいただこうということで予定をさせていただいておりますが、この第1回目ということで考えております。
    以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
  • 堀部会長
    ありがとうございました。
    それでは、特にご発言がないようですので、本日の議事は以上で終わらせていただきますが、事務局のほうもよろしいですか。
    それでは、以上で終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

11時42分閉会

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